麻酔科学・臨床麻酔 _ 臨床麻酔
麻酔科医・集中治療医に必要な
血液凝固,抗凝固,線溶系が分かる本
改訂第2版
[ 臨床麻酔 ]
A 4 判・324 頁・定価(本体 8,200 円+税)
ISBN: 978-4-88003-894-0
“大量出血”への対処は,集中治療医,麻酔科医にとって極めて重大な問題で,その対策において血液凝固,抗凝固,線溶系の知識を基に,原因を同定し,治療を行う.第1版に引き続きこの領域の基礎,臨床,予防,治療を詳しく解説し,改訂第2版ではさらに新しい知見,項目を追加し,内容を一層充実した.
〔主な目次〕
(基礎)
1.止血と線溶のメカニズム
1.血管内皮の機能
(1)正常血管内皮の機能
(2)損傷された血管内皮における変化」
2.血小板の機能
(1)血小板顆粒
(2)血小板アゴニスト
(3)血書板膜タンパク
3.血漿における凝固反応
4.止血の共通経路
(1)トロンビンの産生
(2)トロンビンに対する調節系
5.線溶
6.総括
2.検査と読み方
①一般検査
1.血小板
(1)血小板数
(2)出血時間
2.凝固系
(1)活性化部分トロンボプラスチン時間
(2)プロトロンビン時間
(3)フィブリノゲン
(4)アンチトロンビン/トロンビン・アンチトロンビン複合体
3.線溶系
(1)FDP/D ダイマー
②全血凝固能検査
1.全血凝固能検査法:活性化凝固時間(ACT)
(1)定義
(2)歴史的背景
(3)測定方法/測定装置
(4)ACTに影響を与える因子
(5)ACTの問題点
(6)ヘパリン抵抗性
(7)診療ガイドラインに見るACT
(8)ACT変法
③TEG,ROTEM,ソノクロット
1.止血能を把握するために必要なこと
2.測定原理と測定パラメータ
(1)TEG,ROTEM
(2)ソノクロット
3.臨床応用
④血小板凝集能検査
1.出血時間(Bleeding time,Duke法)
2.透過光法 (Optical aggregometry,Light transmission aggregometry)
(1)PRPの作成
(2)測定と判定
3.インピーダンス法 (Multiple electrode,aggregometry,Electorical aggregometry)
4.Verifynow®
5.Plateleworks
6.Platelet Function Analyzer(PFA)-100®
7.Impact-R™ (Cone and plate(let) Analyzer®
8.Total Thrombus Formation Analyzig System(T-TAS)®
9.VASP (vasodilator-stimulated phosphoprotein)Analysis®
(臨床)
1.周術期の凝固・線溶系の変化と血栓塞栓症
1. 周術期の凝固線溶系の変化:組織因子の発現
2. 周術期の血栓塞栓症の発生様式
3. 周術期の心筋梗塞と脳梗塞との発生様式・危険因子の違い
(1)周術期の心筋梗塞
(2)周術期の脳梗塞
4. 周術期の静脈血栓塞栓症のリスク評価と予防システム
5. 心臓血管外科手術における周術期変化
2. 大量出血と止血機能
1. 血液希釈による影響
(1)血液希釈が凝固系に与える影響
(2)血液希釈が血小板に与える影響
(3)血液希釈が線溶系・抗線溶因子に与える影響
(4)血液希釈がglycocalyxに与える影響
(5)大量出血の対処に用いる輸液,輸血製剤が凝固系に与える影響
2.凝固・線溶系のモニタリング
3.外傷性大量出血への対処
4.Damage control resuscitation
(1) Permissive hypotension
(2) 体温の維持
(3) アシドーシスの補正
(4) カルシウム値の補正
(5) 凝固因子の補充
(6) 血小板
5.手術中の大量出血に対する対処
3. 危機的出血への対応ガイドライン
1.危機的出血と「危機的出血への対応ガイドライン」
(1)大量出血と危機的出血の定義
(2)危機的出血時における輸液・輸血の実際のタイミング
(3) 「危機的出血への対応ガイドライン」作成の背景
(4) 危機的出血時における赤血球製剤の輸血
(5)新鮮凍結血漿投与の適応
(6)血小板濃厚液投与
(7)その他の注意点
2.「危機的出血への対応ガイドライン」の今後の方向性
(1)放射線照射
(2)新鮮凍結血漿の早期投与とフィブリンノゲンの補充
(3)エプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組換え)
4. 産科出血における凝固障害の特徴とその対処法
1.産科出血における凝固障害
(1)産科出血の原因疾患と凝固障害
(2)産科CDIスコア
(3)線溶亢進型DIC
2.凝固障害を起こしやすい産科疾患
(1)羊水塞栓症
(2)DIC型後産期出血
(3)常位胎盤早期剥離
(4)妊娠高血圧症腎症
(5)HELLP症候群
(6)死胎児症候群
(7)急性妊娠脂肪肝
3.産科出血における大量出血・凝固障害の対処法
(1)産科危機的出血への対応ガイドライン
(2)輸血
(3)フィブリノゲン
(4)遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子
(5)トラネキサム酸
(6)回収式自己血輸血
(7)トロンボエラストメトリー・トロンボエラストグラフィー
5.新生児,小児と血液凝固
1.新生児および低出生体重児の止血・凝固・線溶の特徴
2.ビタミンK欠乏症と補充療法
3.先天性心疾患と凝固異常
4.遺伝子組換え型活性型第Ⅶ因子製剤
5.術前管理・小児の凝固能検査と血栓症リスク
6.臓器移植と血液凝固
①心臓移植,補助人工心臓(VAD)と血液凝固
1.VADの現状~時代は拍動式から連続流型へ~
2.本邦におけるVAD
3.VADの構造と血栓症
4.VADにおける抗凝固管理
(1)VAD装着術中
(2)VAD装着術後
5.VAD患者の非心臓に手術における抗凝固
6.VAD患者の心移植術
②肝臓移植と血液凝固
1.肝不全患者の止血凝固系
2.肝移植の術中管理
(1)前無肝期~執刀から門脈,肝動脈の切離まで
(2)無肝期~門脈,肝動脈のクランプから再灌流まで
(3)新肝期~門脈の解放から手術終了まで
(4)止血凝固系に影響を与えるその他の因子
(5)中心静脈圧
3.トロンボエラストグラム
(1)トロンボエラストグラムによる診断と治療
4.輸血とピットフォール
5.肝移植における抗線溶薬の使用
(1)アプロチニン
(2)アミノカプロン酸とトラネキサム酸
6.肺塞栓症
7.その他の止血剤
(1)遺伝子組替え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤
(2)バソプレシン
(3)ビタミンKと活性型プロトロンビン複合体製剤
8.術後の抗凝固療法
9.生体肝移植と脳死肝移植の違い
10.肝移植と凝固因子異常
7.術中回収血・術中貯血と血液凝固:Cell Saver
1.術中貯血と血液凝固系
(1)ヒドロキシエチルでんぷん輸液剤と血液凝固
(2)保存中の自己血における凝固機能
(3)自己血返血後の血液凝固系
2.術中回収式自己血輸血と血液凝固
(1)回収血中の凝固関連因子
(2)術中回収式自己血輸血と投与後の凝固機能
(3)術中回収式自己血輸血と凝固因子の補充
8.人工心肺と血液凝固
1.ヘパリン
(1)ヘパリンの投与量とモニター
(2)ヘパリンの抵抗性
2.ヘパリンの中和
(1)プロタミンの薬理,投与量,投与方法
(2)副作用
3.止血に影を与えるCPB関連要因
(1)血液希釈
(2)低体温
(3)血小板への影響
(4)内皮細胞の活性化と線溶亢進
4.心臓手術における凝固異常
(1)凝固異常を有する患者
(2)CPB後の出血予防策
9.ECMO,LVAD装着時の抗凝固療法
1.ECMO 装着時の抗凝固療法
(1)ECMO装着時の抗凝固療法
(2)ECMO装着時の抗凝固療法の指標
(3)ECMO装着時の輸血療法
(4)ECMO離脱時の抗凝固療法
2.VAD装着時の抗凝固療法
(1)VAD装着術中
(2)体外設置型VAD装着後の抗凝固療法
(3)埋込型LVAD装着後の抗凝固療法
(4)VAD装着中の出血性合併症
10.Hemodialysis, CVVH時の抗凝固療法
1.血液浄化法中の抗凝固療法
2.抗凝固薬
(1)ヘパリン(未分画ヘパリン)
(2)低分子ヘパリン
(3)メシル酸ナファモスタット
(4)アルガトロバン
(5)その他
11.ヘパリン起因性血小板減少(HIT)の病態と検査診断
1.HITの病態
2.HIT抗体検査の種類と検査精度
3.HITの臨床診断
4.HIT検査診断およびその臨床に関する誤解
5.HITの治療
12.抗凝固・抗血小板薬服用患者の麻酔管理
1.抗血小板薬・抗凝固薬休薬に伴う危険性
2.硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔の有効性と可能性
3.抗凝固薬
(1)血栓溶解薬
(2)未分画ヘパリン
(3)低分子ヘパリン
(4)ワルファリン
(5)フォンダパリヌクス
(6)直接的トロンビン阻害薬
(7)ハーブ(生薬)療法
4.抗血小板薬
(1)アラキドン酸代謝阻害薬
(2)チエノピリジン誘導体
(3)環状ヌクレオチド代謝作用薬
(4)セロトニン受容体阻害薬
13.出血性疾患,血栓性疾患を持つ患者の周術期管理
1.止血の生理学
2.出血性疾患
(1)凝固因子の異常
(2)血小板の異常
3.血栓性疾患
(1)抗凝固・線溶系の生理学
(2)先天性プロテインC欠乏症/プロテインS欠乏症
(3)抗リン脂質抗体症候群
14.DICと血液凝固・線溶系
1.DICの病態と病型分類
2.炎症と凝固
3.診断基準の変遷
4.治療
(1)アンチトロンビン
(2)トロンボモジュリン
15.周産期の静脈血栓塞栓症(VTE)と麻酔管理
1.周産期VTEの疫学および病態
2.周産期のVTEの予防
(1)「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」
(2004年第1版,2009年改訂版)
(2)「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」
(3)「産婦人科診療ガイドライン-産科編-」日本産科婦人科学会
(2008年,2011年,2014年)
3.周産期のVTEの治療と麻酔管理
(1)VTEの低リスクおよび中リスクの妊婦の分娩管理と麻酔管理
(2)VTEの高リスクおよび最高リスクの妊婦の分娩管理麻酔管理
(3)VTEと診断された妊婦の治療と麻酔管理
予防治療
1.凝固機能維持
①血小板輸血,FFP
1.血小板濃厚液(PC)
(1)概要・規格
(2)適応
(3)投与量
(4)投与・取り扱い上の留意点
2.新鮮凍結血漿(FFP)
(1)概要・規格
(2)適応
(3)投与量
(4)投与・取り扱い上の留意点
3.輸血合併症:輸血関連肺傷害(Transfusion Associated Lung Injury:TRALI)
(1)定義
(2)病態生理
(3)疫学
(4)臨床症状・診断基準
(5)鑑別診断
(6)治療
(7)予防措置
②心臓血管手術における血液製剤の可能性
1.人工心肺開始前のヘパリン抵抗性に対するアンチトロンビンの有効性
2.クリオプレシピテート,フィブリノゲン製剤の止血に対する有効性
③リコンビナント活性型第Ⅶ因子製剤(rFVlla)
1.rFVllaの作用機序
2.rFVllaの推奨投与
(1)インヒビターを有する血友病患者への投与
(2)先天性第Ⅶ因子欠乏症患者への投与
(3)小児患者への投与
3.rFVllaの適応外使用
(1)血小板疾患
(2)抗凝固薬の拮抗
(3)脳出血
(4)外傷・周術期
2.抗凝固療法
1.血栓症発症の機序
2.生体内の血液凝固制御機能
3.抗凝固薬作用機序と副作用
4.AT依存症性抗凝固薬
(1)ヘパリンおよびヘパリノイド
(2)合成ペンタサッカライド
5.AT非依存性抗凝固薬
(1)凝固因子合成阻害薬
(2)直接トロンビン阻害薬
(3)直接Xa阻害薬
(4)生理的凝固抑制因子製剤
6.プロタミン
7.抗凝固薬開発と傾向
3.静脈血栓症と抗凝固療法:肺血栓塞栓症の予防ガイドライン
1.本邦のガイドライン
(1)予防ガイドライン作成委員会予防ガイドライン
(2)日本整形外科学会静脈血栓塞栓症ガイドライン
(3) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告)
肺血管塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン
(2009年改訂版)
2.欧米のガイドライン
(1)ACCP(American College of Chest Physicians)ガイドライン第8版
3.ガイドラインの法的解釈
4.抗血小板薬
1.抗血小板薬の種類と機序
(1)Thromboxan A₂Pathway 遮断薬
(2)ADP受容体阻害薬
(3)Phosphodiesterase阻害薬
(4)プロスタグランジン誘導体
(5)5-HT₂受容体拮抗薬
(6)トロンビン受容体拮抗薬
(7)Glycoprotein llb/llla 阻害薬
2.休薬期間
3.急性冠疾患
4.脳卒中
(1)モニタリング
5.血栓溶解療法
1.血栓溶解薬の作用機序
2.血栓溶解薬の種類
3.血栓溶解療法の適用
(1)急性死心筋梗塞
(2)脳梗塞,脳血栓塞栓症
(3)肺血栓塞栓症
4.血栓溶解療法の副作用
6.抗プラスミン剤
1.抗プラスミン剤の作用機序と種類
2.周術期における抗プラスミン剤
3.外傷,脳血管障害による出血と抗プラスミン剤
4.アプロチニン投与と合併症
5.ポストアプロチニン時代の抗プラスミン剤
7.宗教上の輸血拒否
1.宗教的輸血拒否に関するガイドライン
2.患者の自己決定権
(1)18歳以上の成人
(2)15歳未満の子ども
3.緊急輸血が必要とされる術前インフォームド・コンセント
4.自己決定能力と未成年への輸血